PCケースの見方・選び方
新編:「よいPCケースとは?」
PCケースは最大のPCパーツです。完成後の操作性やメンテナンス性を左右するだけでなく、毎日目に触れるインテリアでもあります。 それでもケースの購入予算が隅に追いやられがちなのは、高価なケースを買ってもマシンの性能に変わりはないと考える人が多いからでしょう。
しかし、自動車の性能がボディや足回り、給排気系などで大きく違ってくるように、PCの安定動作は、そのほとんどをケースの機能に依存しています。そのうえ冒頭に書いたような使い勝手や静粛性、見栄えの問題があります。
ではケース選びのポイントとはどういうものなのか、初心者の方にもご理解いただけるよう、なるべく専門的な用語を避けてご説明していきます。 文中で想定しているPCケースは、とくに注釈がない限り標準的なATXのミドルタワータイプです。
■目次
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高級なケースと安物(特価品は別)の違いを一言でいえば「出来が違う」ということです。筐体の出来は、第一に剛性(強度)の違いに現れます。
材質
PCケースは上に物を載せたり移動を繰り返すこともあり、荷重で筐体が歪むとサイドパネルが開閉しにくくなったり、マザーボードの取り付け位置が狂って拡張カードやコネクタ類に無理がかかる場合があります。
ケースの剛性を決定するのは外板(鉄またはアルミ)の厚みです。目安としてはスチールで0.8〜1.2mm、軽量のアルミなら1.5〜2mmあれば及第とされています。この数値を自社サイトで公開しているメーカーもあるので、ご購入の際の参考にされてはいかがでしょうか。
工作精度
ケースの出来を決めるもう一つの要素は「工作精度」です。
これは剛性以上に微細な概念ですが、安価なケースでは「ネジ穴がずれていてビスが真っ直ぐに入らない」「サイドパネルやストレージがスムースに収まらない」「パーツ類をきちっと組み付けても隙間ができる」といった形で粗悪な工作が露見します。
もっとも、最近はケースの工作精度も底上げが著しく、鉄板のエッジ処理もしていないような危険な製品はあまり見かけなくなりました。
それでも、おおむね1万円を境界として、PCケースの剛性と工作精度にはレベルの差が見られます。
このようなことはスペック表からは読み取れませんが、なるべく多くのケースを試用して、その実感を商品欄のコメントに反映させています。

アルミケースAS Enclosure M0の内部。フレーム
に2mm、前面パネルには3mm厚のアルミ材を
使用し、日本製らしく、ていねいに美しく仕上げ
られている

ケースのスペックで、外形寸法と並んで判りやすいのがドライブベイの数でしょう。ドライブベイには次の3種があり、装着するストレージによって使い分けます。 ・
5インチベイ:CD-RW、DVD-ROMドライブなど ・ 3.5インチベイ:カードリーダー、フロッピーディスク、MOドライブなど ・
3.5インチシャドウベイ:ハードディスクドライブ
それぞれの数ですが、最も普及しているミドルタワーの場合は次のような構成が一般的です。 ・ 5インチ×4 ・ 3.5インチ×2 ・
3.5インチシャドウ×4 最近は高級品でも普及品でも、ほとんどがこの構成になっています。
これほど多くのベイを必要とするユーザーは多くないかもしれませんが、RAIDなどで複数のHDDを使いたい場合はシャドウベイの数に注意してください。 シャドウベイは1段ずつ空けて使うほうがHDDの熱を逃がしやすく、着脱の作業も楽になります。

ミドルタワーの標準的なドライブ構成。右側
の3個の箱がドライブベイで、上から順に
5インチ×4、3.5インチ×2、3.5インチシャドウ×4

PCの組み立て作業や、完成後の拡張やメインテナンスがどれだけ楽にできるかという問題です。 これは前述の「工作精度」にも密接に関係しますが、優れたケースには、それ以外にもユーザーの利便性に配慮した工夫が数多く見られます。
一例として、3.5インチシャドウベイが簡単に着脱できるものがあります。 HDDはベイの左右からネジ留めするため、ケースの構造によっては両方のサイドパネルを開放しなければならず、かなり面倒です。 シャドウベイを手で外せれば、外でHDDを固定し、ベイごとはめ込むだけなので作業は非常に楽になります。
AT互換機の時代から高級ケースに採用されていた機構に、レール式の5インチベイがあります。 CDドライブの左右にスキー板のような金具を取り付け、ベイの内側にあるガイドレールに滑り込ませる方式なので、この場合も片側のサイドパネルを開くだけで作業ができます。 別のアプローチとして、最近はドライブの固定にネジを使わないケースも登場しています。 パネルなどの固定にドライバーレス(指で回せる:ローレットスクリュー)ネジを採用しているケースも増えてきました。頻繁に使うネジは山をなめて回せなくなることもあり、ドライバーレスのほうが圧倒的に便利です。 また、高級アルミケースには、マザーボードベースが着脱できるものもあります。 これも頻繁にケースを開けて作業する人には便利な機構ですが、剛性の面で多少の不安もあります。
ドライバーレスのネジは単体でも市販されているので、ケースを買ってから交換することも可能です。その場合はインチ規格(パネルやHDDを取り付けるネジ)と、ミリ規格(一部のアルミケースのパネルやCDドライブを固定するネジ)の違いに注意してください。無理にねじ込むと、ネジ穴の螺旋を潰してしまいます。
作業性に優れたPCケースはマシンに手を入れやすく、自作趣味を一層楽しいものにしてくれるでしょう。

手で回せるローレットねじを採用したケース(右)。単品
で買う場合はミリ規格とインチ規格の違いに注意したい

CPUクロックも3GHzを超える時代になり、その熱をどうするかがますます問題になっています。
発熱量が増える原因はクロックサイクルそのものというより、CPUを高クロックで動作させるための高電圧化や、ハイパースレッディング(CPUを効率的に使う技術)などが相乗的に生み出すものです。その結果、Pentium4/3.06GHzでは消費電力が80ワットを突破し、これが発熱量を大きく引き上げたというわけです。
ケースファン
CPUを直接冷却するのはCPUクーラーですが、もしケースが密閉されていたら熱の行き場はなく、ケース内の温度がどんどん上昇してCPUクーラーの働きは無意味になります。
そこでCPUメーカーはプロセッサーの環境温度を指定し、それを超える温度での使用には保証を与えない方針を採っていますが、その指定温度がまた、3.06GHzでは2.8GHzより3度も低い(摂氏42度)という厳しさです。
熱を発するのはCPUだけではありません。高性能化したHDDやビデオカードも大きな熱源になっているため、PCケースには一昔前とは比較にならないほどの冷却能力(排熱性能)が求められるようになっているのです。
以前は電源ファンが生み出すエアフローだけで排熱しているケースもありましたが、これからPCを組み立てるなら、最低でも前後に各1基のファンが取り付け可能なケースを強くお薦めします。それも、なるべく口径の大きいファンを取り付けられるケースを選びましょう。
話の順序が逆になりますが、冷却を第一に考えるならファンより先にケースの容積を考慮するべきです。サーバーケースのように、大きなケースほど熱が溜まりにくいことは言うまでもありません。

背面のケースファンを外から見た
ところ。ミドルタワーでは120mm
口径が主流になりつつある
パッシブダクト
Pentium4/3.06GHzの環境温度が明らかになって以来、各ケースメーカーから「パッシブダクト」の付いたケースが相次いで発表されるようになりました。
これはIntelが推奨する機構の一つ。サイドパネルの開口部からCPUに向かう排熱ダクト(エアファンネル)のことで、ファンを組み合わせたものがあります(それじゃアクティブダクトじゃないの? という突っ込みはナシ)。CPUクーラーの真上が外気と接することになるので、相当の効果はあるようです。
ファンやダクトを増やせば不可避的にPCの動作音は大きくなります。内部からの音漏れも増え、ほこりも入りやすくなるでしょう。それでも、ハイスペックのPCを求めるなら充分な冷却対策は必須です。
つまり、PCの高性能化と騒音等の問題はトレードオフの関係にあるといえます。
その対立関係を少しでも緩和して、ハイスペックと静粛性の両立を指向しようというのがいわゆる静音パーツですが、それについては後段の「静粛性について」で詳しく述べます。
 
上のほうの円形のメッシュがパッシブダクト(左)。サイドパネルを開くとこのようになっている
内部にも注意
最後にもう一つ。同じケースを使っても内部温度に差が出る要因に、ディスクドライブにつなぐケーブルとその処理方法があります。
マザーボードに付属しているFDDやIDEのフラットケーブルは面積が広く、重いカーテンのように空気の流れを阻害します。別売のスマートケーブル(同軸)に交換すれば空気抵抗を軽減でき、排熱性が改善されるだけでなくケース内の作業もずっと楽になります。

スマートケーブル。フラットケーブルに
比べて空気抵抗がはるかに小さい
それでも、なるべくケーブルを短くまとめ、空気の通り道をふさがないように処理する工夫は必要です。PC自作に造詣の深い人のマシンは、内部が実にすっきりしています。

USB規格が普及し、PC本体と周辺機器との接続にはUSBポートを経由するのが当たり前になりました。 PCケースもフロントパネルにUSB
2.0ポートを持つのが普通になり、なかにはIEEE1394端子やオーディオ端子が付いているものもあります。
固定的に使う周辺機器は背面につながないとケーブルが邪魔になりますが、デジカメやメモリースティックのようにテンポラリーに使うものは、前面のポートを利用するほうが格段に便利です。 ご自身がよく使う機材に合わせ、必要なポートが前面に付いたケースを選ぶといいでしょう。
ところが困ったことに、ケースから出ているフロントポートの信号線と、マザーボード側のコネクタでは色分けなどの共通性がなく(規格化されていない)、各メーカーがバラバラの表示をしています。 それぞれが独自に作っていて、メーカーも(もちろんショップも)どの線がどのピンに対応しているのかを知らないため、質問されても答えることができません。
したがって、ユーザーは自分で試行錯誤して正しい結線を見つけるしかないのですが、ぜひともメーカーに改善してほしいところです。 メーカーが協定を結べばいいだけのことだと思いますが、実際には、なかなか実現しません。

フロントポートの例。この場合はSB2.0
×2、音声入・出力、IEEE1394という
組み合わせ

電源が少し注目されるようになったのは、DX4でCPUクロックが100MHzに達したころでしょうか。 当時はHDDもメモリも容量が小さく、その上なぜか「拡張の余地を残しているのはパワーユーザーの恥」とばかり、ベイやスロット、ソケットをパーツで埋めつくそうとする人が多く、さすがに貧弱な電源が悲鳴を上げたというわけです。
その後はむしろパーツの小型化・低電圧化が進み、電源の危機も回避されるかに思われたのは、まったくの誤解でした。CPU以下、PCパーツの消費電力は飛躍的に上がり、ますます電源の信頼性が問われるようになっています。
電源ユニットは独立したパーツでもありますが、初心者の方は電源付きケースを求めるのが普通だと思いますので、ここではケースのスペックとして留意点などを考えてみます。 電源の性能としては、容量、安定性、耐久性、静音性などが挙げられます。
 
プラグ方式の電源ユニット(左)は必要な出力ケーブルだけを取り付け
られるため、ケース内のエアフローを妨げることが少ない(ToughPower
750W W0116)。右はセミ・ファンレスのPhantom500。通常はファンレス
で動作し、温度上昇を検知するとファンが回転する
電源容量
電源容量は、システムの電力消費に見合っていることが第一です。使用するパーツの消費電力を合算し、それに2〜3割程度の余裕を持たせたワット数が最適値といわれていますが、その理由は、電力消費の小さいシステムに大出力の電源を付けても損失が大きくなり、無駄な電気代を払うだけだからです。 とはいえ、まだ組み立てていないマシンの消費電力を計算するのは困難ですから、ここでは一般的な目安をご紹介しておきます。 安価なケースでも400Wのユニットが付属しているのが最近の傾向です。 普及品クラスのCPUを使い、HDDとCDドライブが各1基ぐらいの構成なら350W搭載のケースでも心配ありませんが、将来はシステムをアップグレードしたいとお考えなら400Wを選んでおくのが得策です。 前記のようにPCパーツの電力消費量は増加し続けています。3DゲームやAV用途でハイエンドのシステムをお求めの方、HDDをたくさんつなぐ予定の方は、500W以上の電源も考慮したほうがいいかもしれません。
MicroATX(省スペースPCの規格。詳しくは後述)でも、高級なケースは300W以上の電源を採用するようになりました。 ただし、MicroATXの筐体は容積が小さいため、大容量の電源をフルに使うようなシステムを組んでも冷却が追いつかず、トラブルを引き起こす可能性があります。ですから、この場合の「300W以上」は、あくまでも保険と考えるべきでしょう。
安定性、耐久性
これらは数値で表しにくい概念ですが、技術的に細かく見ていけば、部品の点数と質、回路設計の違いなどを指摘することができるでしょう。 近ごろ豪華塗装が目立つ電源も、もともとが個性に乏しい四角い箱。同じ出力ならどの製品もそう変わらないだろうと思いがちですが、商品開発をしている輸入代理店やメーカーの話を聞いていると、
電源ユニットの性能 ≒ 価格
となるのも当然だと判ってきます。 過当競争が限度を超えたコストダウンを生み、その皺寄せが、目に見えにくい「安定性・耐久性」にすべて集まるということです。 消耗品と割り切って安価な品を選ぶのも一つの見識かもしれません。しかし定格出力や安全性が守られていないような製品は、消耗品とさえ言えません。
ある代理店が台湾の某メーカーに商品開発を依頼したところ、 「本当の400Wが欲しいのか?」 と聞き返されたというのです。事実なら「ラベルだけの400W」が存在することになるし、そんな発注をする確信犯の業者もいることになってしまいます。 「+3.3V、+5V、+12V」といった個別の出力も、安物のユニットでは表記どおりの電圧が出ていないものがあるといわれます。
以上のような話はぜひジョークであってほしいものですが、この話から学ぶことがあるとすれば、「品質は金で買うものである」という一つの真理ではないでしょうか。
反対に「高価でも悪い商品」もないとはいえません。しかし、高い買い物をするときは誰でも慎重に、製品の評判やメーカーをチェックするのではありませんか? 電力や電圧なんて測定すれば真偽が判ってしまうもの。名の通ったメーカーなら、そんな誤魔化しようもない数字を偽ることはできません。したがって電源選びの2番目のポイントは、消極的なようですが「ブランド」になると思います。
以上、電源ユニットを搭載したケースについて述べましたが、最近の高級ケースには電源を搭載していないものも多く、手持ちの電源を流用したい方や、好みの電源を購入したい方に好評を博しています。 単体の電源ユニットも選択肢が増え、自作趣味の奥行きが深まった印象です。

少し前、自作PCの世界には「静音化」のブームがありました。より静かなマシンを追究しようというトレンドでしたが、冷却能力の項で述べたように、ハイエンドCPUが3GHz超となった今は「処理速度と静粛性はトレードオフの関係にある」と考えるのが多くのユーザーの自然な感覚になりつつあるようです。
とはいえ、ハイスペックPCを使う場所で常に爆音が許されるわけではないし、静かにしたければ低スペックで我慢せよというのも暴論でしょう。要するに「程度問題」であって、やはり理想は速くて静かなマシンです。
騒音の発生源は電源ファン、ケースファンがその筆頭で、対策として「静音タイプ」と呼ばれる製品が数多く登場しています。
 
ファンはどれも同じように見えるが、ベアリング方式
や回転数、ブレードの形状・枚数によっても性能が
大きく異なる
写真のケースはフロントファンで吸気、リアファンで
排気して、積極的に空気の対流を起こす仕組み
電源ファン
静音タイプの電源には2種類があり、1)高級なファン(回転軸からの異音や風切り音が小さい)を使って電源ファン自体を静粛化しているもの、2)ファンコントロール機能を備え、マシンの負荷や温度が低いときはファンの回転数を落として騒音を抑えるタイプのどちらかです。
※上記のどちらでもないのに静かで安価な製品には要注意。そういう電源は単にファンの回転数を下げているだけの可能性があり、ユニットの耐久性だけでなく筐体内の温度上昇も心配です。
ケースファン
ケースファンがうるさければ、静音タイプのファンに交換するのが効果的です。
ファンの騒音レベルを決定づけているのは、ブレード(フィン)の形状とサイズ、ファンモーターの軸受け方式、定格回転数などですが、これらは複合的な要素なので「どの形式で何回転がベスト」と一概に言うことはできません。
また、うるさいと感じる音量・音質には個人差があり、設置環境の騒音レベルも一様ではないから、ますます厄介です。
こういう場合は、インターネットで情報を集めるのが一番でしょう。当サイトでもなるべく多くの機材を試用し、コンテンツの形で実感をレポートしていこうと思います。
軸受け方式
先ほど騒音レベルの要素として「軸受け方式」を挙げました。これはモーターの回転軸を支えるベアリングのことで、冷却ファンでは大きく分けて、特殊鋼の球で保持する「ボールベアリング」と、軸を通す筒に潤滑剤を封入する「スレーブベアリング」の2種類があります。専門的なことは判りませんが潤滑剤は流体なので、よくいわれる「流体軸受け」もスリーブベアリングと同義だと筆者は思っています。
原理としては、耐久性や作業効率ではボールベアリングが勝り、静粛性ではスリーブベアリングが有利(金属の接触面がないから)となりますが、製品の出来によっては立場が逆転するかもしれません。騒音レベルは回転域でも変化します。
ボールベアリング式ではIntelの公式クーラーにもなった山洋電気、自衛隊の拳銃も作っているミネベア製が有名。スリーブベアリング式はPanaflo(HWB)の松下、NBRのNidec、ハイプロベアリングのADDAが人気で、この辺りの先進的なスリーブベアリング式を「流体軸受け」と呼ぶユーザーが多いようです。
ファン口径とファンコントローラー
同じファンなら、ゆっくり回したほうが静かなのは当たり前ですよね。低回転時の音質が嫌いな人もいますが、音圧レベル(db値)は下がります。
しかし回転数を落とせば風量も減り、冷却性能が落ちてしまうのも当然です。
これを解決するには大口径ファンで風量を補うのが近道、というわけで、最近は低回転の120mmファンを搭載するケースが増えてきました。大口径のファンを取り付けられるのは一般的に大きめのケースです。
小さいケースに小さいファンの組み合わせは、見かけに反して轟音を発生しやすいものです。理由はもうお判りと思いますが、小型のケースは熱が溜まりやすく、小口径のファンを目一杯回さないと冷却が追いつかないからです。
お手持ちのケースで、低速・大口径のファンを取り付けられない場合は「ファンコントローラー」を導入する手もあります。
マシンが低負荷・低温のときはファンの回転数を抑え、高負荷・高温のときはフル回転させるというように、状況に応じてファンの回転数をコントロールする機器で(フロントベイに内蔵)、同様の機能を初めから持っているマザーボードもあります。

フロントベイに取り付けるファンコントローラ。2か所
の温度センサーで4グループのファンの回転数を
制御できる
その他の注意点
PCの騒音には、ファンやディスクが間接的に起こす二次振動(共振)もあります。これを避けるには、造りのしっかりした、剛性の高いケースを選ぶことが基本でしょう。ドライブベイに吸振材のラバーを付けたケースもあります。
高速なシステムでは、ビデオカードやチップセットのクーラー、CPUクーラーも相当な音を出します。
そういった個別の雑音をまめに解消していくことが、トータルの静音化に少なからず貢献します。
初めに述べたとおり、ハイパワーと静音化には二律背反の要素があります。それだからチャレンジのし甲斐があるともいえますが、静粛性を求めすぎてケース内の熱が限度を超すと、パーツの寿命を縮めたり、システムダウンで仕事に深刻なダメージが及ぶ惧れもあります。
静音化を考えるなら、ケース内の温度管理には充分お気をつけください。
蛇足ですが、PCがうるさいとお感じなら耳から遠ざけるのも一案です。タワーケースを机に置いて、机の下はガラクタや棄ててもいい書類で一杯という人をよく見かけます。ミドルタワー以上は机の下が本来の指定席だと思うのですが……。

PCケースはスチール製が一般的ですが、一部の高価なケースはアルミ製となっています。その利点はどこにあるのでしょう。
熱伝導性
アルミケースが登場したころによく言われたのは、アルミニウムは鉄よりも熱伝導率が高いため放熱力が大きいという話で、これは化学的な事実です。
しかしPCの冷却は、主に各種のファンで空気の流れを生み出し、排気孔から熱を逃がすことで実現しています。内部の空気がケースパネルに触れて放熱される量などは、排出される熱全体からすると微々たるもので、ケースの材質が何であっても関係がないというのが現実です。
ただし、それは熱源とパネルの間に空気があるからで、HDDケースやドライブベイのように熱源がシャーシに接している場合はアルミが有利です。熱伝導シートなどを併用して密着させれば、それなりの効果が期待できると思います。

高級なアルミケースでは、各部に細かな
肉抜き処理(軽量化と放熱のため、強度
に影響しない部分に穴を開ける)が施され
ている
軽さとルックス
アルミケースには軽いという利点があります。完成品を買った場合とは異なり、自作PCは組み立て後も機能拡張などでケースを開ける機会が多いので、軽さは重要です。
引き出しづらい場所に重いケースを設置すると、ついついメンテも億劫になり、ほこりを溜めて熱暴走の原因を作ることにもなりかねません。
もう一つ、けっこう大事なポイントはアルミパネルならではの美しさです。とくに無塗装や透明な塗装を施したケースでは、加工のしやすさを生かしたヘアライン処理や鏡面処理がスチールとは一味違う高級感を演出します。
あえて苦言をいえば、アルミでなければ不可能と思わせるほど斬新なデザインは、あまり見当たらないことでしょう。スチール製でもアルミと見まがうようなものが出始めています。
アルミケースの欠点は鉄に比べて強度に劣ることですが、この点はパネルの厚みを増すことで、ほぼ解決できます。一時のアルミブームは去り、最近は高品位の製品しか流通しなくなっているので、剛性不足を心配する必要はなさそうです。
 
加工しやすいアルミの特性を生かし、思い切ったデザイン
のケースも登場している。左のPC-777Aは頭頂部に操作系
を集中し、前後に120mmファンを内蔵するなど、機能性や
実用性も充分に備えている
右は冒頭で紹介した日本製「AS Enclosure M0」の外観。
質実剛健と見るか無機質と感じるかはユーザー次第だが、
アルミケースらしい繊細なテクスチャが本機の高品位感
を引き立てている

一昔前のマザーボードはごく基本的なI/Oしか搭載していませんでしたが、最近は音源やネットワークに加え、ビデオチップもオンボードに持つものが増えてきました。こうなると、拡張スロットを7個も持つミドルタワーの存在意義を問い直したくもなります。
MicroATX
実際に、HDDとCDドライブが各1基というようなシステムならMicroATXのケースでも充分なのです。また、MicroATXのケースはミドルタワーよりもデザインの自由度が高く、個性的なスタイリングのケースが目立ちます。
MicroATXの難点は、まずマザーボードの選択肢が少ないこと。また、電源容量に限りがあり、熱対策が難しい点も悩みの一つです。
したがって、MicroATXではハイスペックを目指すのではなく、軽めのスペックでデスクトップに置いても耳障りにならない程度のサイレントPCを組むのが賢明だと思います。 いずれCPUの電力消費と発熱が改善されれば、そのときが本格的なMicroATX時代の幕開けになるかもしれません。
 
MicroATXケースとミドルタワー(ATX)ではこれだけ大きさが違う
※写真の比率は、およその目安です
FlexATX/MiniITX
PCケースの新しい潮流に、キューブ型やオーディオケースのようなスリム型があります。いずれもMicroATXよりさらに小さいマザーボード(FlexATXやMini-ITX)を採用し、おしゃれなオフィスやリビングに置いても違和感がないスタイリッシュなものが多いことから、幅広いユーザーの人気を集めています。
FlexATXやMini-ITXのホームファクター(サイズ規定を中心とする物理的な仕様全般のこと)ではベアボーンという、ケースにあらかじめ主要パーツが組み込まれたキットが主流ですが、単体のケースやマザーボードも入手しやすくなってきました。
各ホームファクターは次のように規定されています。
ATX系列の寸法は上限だけが規定されているようで(知識が曖昧で申し訳ありません。間違っていたらご指摘ください)、実際には下記の数値より小さなマザーボードも流通しています。
ATX 305mmx244mm、拡張スロット7本以下
MicroATX 244mmx244mm、拡張スロット4本以下
FlexATX 229mmx191mm、拡張スロット3本以下
(Mini-ITXに近いサイズでmini-FlexATXと称している製品もある)
Mini-ITX 170mmx170mm、拡張スロットは通常PCI×1本 (MiniATXとはまったく別の規格)
Nano-ITX
120mmx120mm、拡張スロットは通常Mini-PCI×1本
小型といってもMicroATXは、ATXよりも1辺が61mm(拡張スロット3本分)小さいだけということが判ります。 FlexATXはIntelが
規定したATXから派生したミニPCの規格。Mini-ITXはマザーボードメーカーのVIAが提唱する規格ですが、ケースに取り付けるネジの位置には互換性があるため、FlexATX/Mini-ITX兼用のキューブ型ケースなども登場しています。
これらのマザーボードはCPUの選択肢が少ないといわれますが、ざっと調べた範囲でも、両方のホームファクターを合わせると
オンボードCPUタイプのほか、Socket
A、370、478、478M、479M、754、775などが選べるようになっているようです。
VIAのマザーボードにはMini-ITXよりもさらに小さい規格があり、これらのうち汎用ケースが発売されているのは120mmx120mmのNano-ITXです。最も小さいPico-ITX(100mm×72mm)はx86互換ではあってもエンベッドPC(組み込み型システム)への採用を意図したものなので、今のところ自作PCのホームファクターにはなっていません。
   Mini-ITX(左)とMicroATX。天地サイズだけでなく
奥行きもかなり小さい
右の枠内はNano-ITX対応ケース。5インチベイには
スリムドライブを採用し、HDDも2.5インチとなっている ※寸法比は厳密ではありません
 
AV機器との親和性を考慮したHTPC(Home Theater PC)MicroATXケース。右は縦置き/
横置き兼用のデスクトップケースで、MicroATXとFlexATXの両方に対応している
省スペースPCでもCPUの処理能力が上がってくると、やはり気になるのは電源です。 FlexATXやMini-ITXのケースでは60〜120WのACアダプターや200Wクラスの電源ユニットを添付しているものが多く、ACアダプターを使えば無音PCの製作も可能な一方、消費電力の大きいCPUを搭載した場合は、電源容量の不足と熱の問題が懸念されます。
そのような不安材料はあるものの、技術が成熟すれば「軽薄短小」に向かうのが世の必然ですし、極小・高速・静音PCは自作ユーザーにとって究極のチャレンジだと思います。当店でも、関連商品の取り扱いだけでなく、情報提供を積極的に進めていく方針です。

PC界の古い格言(川柳?)に「パソコンも ソフトがなければ
ただの箱」」というのがあります。 この「箱」はコンピュータそのものを指していてPCケースとは何の関係もありませんが、言葉尻だけ拝借させていただくと、これまで述べてきたとおり、最近のPCケースは重要なクーリングシステムであり電源供給システムであり、もはや「ただの箱」とはいえないポジションを占めるようになっています。
ただそれは、PCの構造に理解がある人間が思うことで、PCを使うだけの人にとっては依然として「ただの箱」でしょう。もっと言うと、PCを使わない人から見れば、その味も素っ気もない箱がPCなんですよね。
高級なオーディオセットは、鳴っていなくても存在感があります。Macintoshユーザーは、あのスタイルに知性やステータスのようなものを感じて愛用しているようです。かつてPCの世界にそういうものがあったかというと、一流メーカーの完成品を含めても、ほとんど思い当たりません。 ですから、「デザインに予算を掛けられないメーカーが多い」というのも理由のすべてではないような気がします。
むしろメーカーはユーザーの潜在ニーズを誤解して、コストダウンばかり考えすぎているのではないでしょうか。 このところ電源ユニットのデザインが不必要と思われるほど向上したのを見ても、メーカーがどれほどユーザーの消費動向に敏感で、ニーズがあるところにはコストを掛けるものだということが
よく判るような気がします。
であれば、ユーザーはもっと「かっこ悪いケースは要らない」「安いだけの品物はもう通用しない」ということを、消費行動で示したほうがよさそうです。業界としても、価格競争で疲弊するよりは、高付加価値の製品を適正価格で売るほうが良いに違いありません。
余話
ところで「ソフトがなければ ただの箱」と言われた当時(今から20年ほど前)のパソコンは、本体とキーボードが一体で機種ごとに個性もあり、ROMには開発言語のBASICも搭載していました。 つまりこの言葉の意味は「肝心なのはアプリケーション開発ですよ」ということなのですが、今のタワーPCを思い浮かべたほうがリアリティがありますね。
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